2010年11月18日(木)
E39 フロントサイドウインドウのレギュレータ交換 − Nonchanさんより
今回は、E39 98年式 528iにお乗りのNonchanさんより、フロントサイドウィンドウのレギュレータ交換レポートをいただいたので紹介しよう。
9月に運転席側のドアロック不調が発生し、DIYで挑戦と決断した直後に同じ運転席側で「バキッ」言う音が発生、レギュレータも逝ってしまった。DIYあきらめ、ディーラーで修理を実施。
10月半ば、今度は助手席側で「バキッ」、E39の持病とはいえ多すぎる。過去には右リア、9月の運転席側、助手席側は 今回で2回目。さすがにDIYを決心せざるを得なかった。とはいえDIYの自信は無かったがTIS、WEBでの情報を頼りに踏み切った。
結論は「やればなんとかなるものだ」ということであった。また、DIYの良い処は時間をかけられるので無駄な出費が抑えられるのと、今回は不具合が多い 原因と思われることが推測できたので、今後の防止策が得られたのも良かった。独断ではあるが皆様のご参考になれば幸いです。
交換前の助手席側ウインドウである。
以前スピーカ交換の際ウッドパネルを外さずに内張を外した際、運転席側のパネルを割ってしまった。それ以降、内張を外す時はパネルは外すようにした。このパネルはデリケートなため少しづつ浮かせながら外す。
ドアサイドのベンチレーター接続ポート内のねじを外す。
ドアロックハンドル奥のカバープラグを外し、ねじを外す。
内張の周囲から慎重にかつ大胆にクリップを外す。このクリップは割れやすいのでスペアを用意しておくとよい。
内張を引きはがし、カーテシ、スピーカ、パワーウィンドウの配線カプラを外し、内張をドアから完全に分離する。
下のTISの図を参照するとクリップの使用箇所がよく分かる。
内張を外した状態。
これからスピーカ(以前デッドニングを実施したため銀色に光っている)、エアバッグ、パワーウインドウ関係の制御BOX(矢印部)?を取り外す。これらの機器を取り外すのには特に問題は無い。
エアバッグモジュールを外す前に、安全の為バッテリーのマイナス端子を外しておく。このため作業完了後に時計あわせ等が必要になる。また、燃費データ等は消失する。消失を避けたい場合は電池等を利用してバックアックをするとよい。
スピーカ、エアバッグ、パワーウインドウ関係の制御BOXを取り外した状態。
インシュレータを注意深くゆっくりと引きはがす。ディーラーの修理だとインシュレータは交換部品となっているので、5K+αの出費となる。もしインシュレータを引きはがす時、破れそうになったら、ドライヤーで暖めると破らずに済む。
引きはがしたインシュレータ、時間をかければ無傷で外すことが可能だ。
下の写真は、レギュレータの前側のガイドレール部。特に異常は見られない。
こちらは、後ろ側のガイドレール部。これも異常は見られない。が、その左側に白い破片(矢印)が落ちていた。詳細は後述する。
異音を発しながらガラスを下げた。
下にTISの参考図を掲載するが、レギュレータを外すには最初に下の矢印3カ所から外す。外側2カ所は六角ボルト、真ん中はトルクスである。上の3カ所のネジはガラスを外さないと外せない。
ガラスを固定しているところは前後2カ所あり、下の写真は後ろ側である。固定ボルトの左側にプラスチックのガイドとネジがあるが、これはガラスの位置調整用で、平行度の調整には非常に便利であった(前側も同様)。
ガラスにガムテープを貼り、手で持てるようにすると、一人でも作業を十分こなせる。下の図はTISの表示である。図のように持ち上げながら前側に倒すようにすると容易に抜ける。やってみると簡単であった。
写真は上側のボルト部分の前側2本で、雄のトルクス。
これを外すにはE型12トルクスレンチが必要であるが、12mmの12角ソケットでもなんとか外すことができる。ただ、このボルトの頭の高さが低いのと、ソケットの面取りが災いして十分なトルクがかけられない。締め付け時のことを考え、自転車で行ける工具屋にトルクスレンチを買いに走った。
これは上側の後ろ側の部分である。
これが外したレギュレータである。モーターは外して新しい方につける。
モータである。特に問題なく脱着できる。
これが新しいレギュレータである。
純正では無く、アメリカからの輸入品でインターネットを通じて購入した。価格は10,380円。安い! 見た目には、プーリーの色が違うぐらいで相違点はない。ただし、ネジのサイズは同じだが、頭はすべてプラスであったため、純正のトルクスネジに換えた。
新しいレギュレータの取り付けにかかったが、下の図の赤矢印のボルトがどうしても入らない。ピッチは正常で、のぞき穴からもネジ穴が中心に見える。なにか変だ。
原因は下の写真の矢印部スペーサみたいな部品。純正と比較すると2.7mm厚い。このためネジの長さが
不足していたのが原因であった。このスペーサを外そうとして横からタガネで軽くたたいてみたが、外れる様子はない。ボルトを変更するしかない。左側が純正で、首下20mmのトルクスネジ。
ホームセンターにはトルクスのボルトは無く、テーパが付いていてトルクがかけられる六角穴付きのステンレスボルトを代用した。ただし首下は25mmのものが無く、30mmを購入した。首下30mmでも干渉は無く取り付けはできたが、約3mmの影響がどこかで出でくるのではないかと、この後の工程は慎重になった。それにしても純正の場合、ネジの掛かりが2〜3mmしかないのは疑問である。
レギュレータを取り付けガラスを入れたところで、ガラス調整である。下の図はTISに表示されている
仕様値で、A=5.4mm、B=10mm。パワーウインドウのスイッチでBの寸法を10mmに合わせるのが難しい。平行度と前後方向の位置調整は前述のように、調整用ネジを利用すると容易であった。
ここで失敗談を一つ。バッテリを接続する前にしなければならないエアーバッグの配線接続を忘れてしまい、パワーウィンドウを作動させるため、エンジンを始動してしまった。当然エアバッグ警告灯が点灯する羽目になった。
ガラスの位置調整が終了したら、内張をセットする前にシーラントのブチルゴムを暖めて柔らかくしておく。最悪シール機能が戻らない場合はホームセンタで薄いブチルゴムが販売されているので、これを利用するとよい。
あとは外したときの逆手順で進める。内張の装着では、クリップの位置を確認して、はめるのが基本かな。
確かめずにやった例である。
作業完了!
さて、原因と再発防止策について考えてみる。あくまでも個人的な見解であることをご了解願います。
下の写真は、巻き下げ時のストッパ部で硬質ゴム状の緩衝材をストッパ側から見たものだ。中央部に凹みが発生している。
重いガラスをこの緩衝材1個で受けるので、この程度の変形は妥当と思えるが、この緩衝材だけで止めることに無理があると感じる。
下の写真は今回不具合を生じた箇所で、赤いプラスチックのストッパ状(矢印)の部品が破損し、破損した先端部分が白いプーリーに噛み混み、プーリーの一部が欠損している。
ストッパが破損したのは、ワイヤーの外側のスリーブ(?)がプーリーの左回転時、すなわちウィンドウを巻き下げる時に引っ張られ、スリーブがストッパを剪断したと考えられる。従って、スリーブが引っ張られることが真の原因である。
上の写真で考えてみると、ウィンドウが下がりきった時は下げストッパによりガラスは停止し、モータも停止する。 しかし、下がりきった瞬間、ガラスの慣性力は、ストッパにより機械的にブロックされている前側ではなく、後ろ側に集中すると推測される。このため、写真の黄色矢印で示される慣性力がワイヤを引っ張るわけである。ワイヤは前側のストッパで機械的に動きを停止させられているため繰り出すことができず、若干の伸びが発生するものと思われる。このときにスリーブもワイヤーと一緒の動きをしてストッパに剪断力を与えると考える。従って、これが繰り返されるとある時点でプラスチックのストッパが疲労破壊して不具合に至ると推測する。
なお、ウィンドウを上げる際には、ガラスの自重が逆側に作用して停止した際の慣性力を低減するのと、ドアフレーム全体でガラスを受け止めるので、部分的な集中が発生しないと考える。
【防止策】
自衛手段としてであるが、ウィンドウを下げるオートは極力使用しないようにし、下げる位置もストッパで止まる寸前で停止させるように心がける。オートで使用する場合も停止寸前に手動で停止させ、ストッパに激突させないようにする。特に、雨天の時など、ガラスとフレームの摩擦係数が低下しそうなときはオートの下げは厳禁と考える。
なお、今後であるが、プーリーの破損は軽微であるからプラリペアで補修し、ストッパを金属で製作して再生にチャレンジ
してみたい。
E34もレギュレータのレールにある白いプラスチック部品が破損するという不具合があるが、E39も経年劣化により不具合が派生しやすい部分があるようだ。皆さんのE39のウィンドウレギュレータは大丈夫だろうか?
末尾ではあるが、有用なレポートをいただいたNonchanさんに感謝する。
ご質問はddkunnejp【@】gmail.comまで。