2005年8月13日(土)
ワイパープレッシャーコントロール装置の修理 − ミッチョさんより
久しぶりにミッチョさんからDIY修理レポートが届いたので紹介しよう。今回は、ワイパープレッシャーコントロール装置の修理だ。
以前からスピードメーターの奥の方から聞こえる異音の原因が分からずに悩んでいた。
車の購入当初から気になっていたが、最近、特にひどくなってきて、とても高級車とは思えない今にも壊れそうな音がするようになった。「だめだわ、ボロボロだわ」状態となったので、この異音の原因特定と修理に取り組むことにした。
その症状とは次のようなものである。
- エンジン始動後、走り始めるとすぐにスピードメーター奥のあたりから「ゴゴゴー」とかなり大きな音がする。それは、何か動きの悪いフラップをモーターが無理に動かしているような音で、2秒ほど続きその後は無音となる。エンジンを始動しただけではその音は出ず、走り始めると(時速20kmくらいになると)必ず出る。
- エンジン停止後、イグニッションスイッチをOFFにすると必ず「ガガガー」と更に大きな音がする。これもアイドリングだけでは症状は出ず、走行後にしか出ることは無い。
- 異音は運転席側のエンジンルームと室内の境目あたりからしているように感じるが、原因が良く分からない。
〔トラブルシューティング〕
ダッシュボード内のモーターといえば、エアコンのアクチュエーターやブロアファンくらいしかないはずであるし、右側(私の愛車は右ハンドル)のエンジンルームと室内の境目にあるとすれば、ワイパー関係か、コンピュータのボックス用冷却ファンくらいしか思いつかない。しかも、エアコンの外気導入フラップのアクチュエーターが原因であれば、走行しなくても再現するはずである。
エンジンコンピューターを冷却するファンを確認してみたが、私のM5にはそのファンはついていなかった。(以前乗っていた93年式530には冷却用のファンが存在した。) 残るはワイパー関係しかないのだが、異音はワイパーの動作に関係なく発生していた。
図1は左ハンドルのワイパーの構造である。
図1 ワイパーの構造私の車には「ワイパープレッシャーコントロール(ADV)」なる装置(以下ADVと呼ぶ)がついている。図1の4のモーターがそれである。これは、車速が上がるほどワイパーをウインドに圧着する圧を高める装置で、写真1〜3のような構造となっている。
写真1 運転席側ワイパーアームの根元(1)
写真2 運転席側ワイパーアームの根元(2)
写真3 ワイパーアームをはずしたところ以前に乗っていた525や530にはついていなかった。よりパワーのあるM5と540、535の運転席側に採用されているようである。
試しにADVのヒューズ(F24)をはずして走行してみると、異音は全く発生しない。異音の原因はこの装置であることが特定できた。
〔取り外し〕ベントレーの整備書によるとワイパーモーター・リンゲージ類全体をはずすのには、バルクヘッドを開けてブロアファンを取り出す必要があるようで、結構面倒な作業のようだ。目的のモーターだけをはずすことができないかと調べてみると、取り付けネジ(トルクス)3本は外からはずせる。また、コンピュータ(DME)を取りはずすことでボックス側から取り出せそうである(写真4)。左ハンドル車の場合はヒューズボックスを取り外すとアクセスできそうな感じだ。
写真4 コンピュータボックス内その方法で取り外したADVモーターを写真5・6に示す。
写真5 ワイパープレッシャーコントロール(表)
写真6 ワイパープレッシャーコントロール(裏)
〔分解・修理〕内部は写真7・8のようになっていて、モーターでウォームギアを回転させ、中央のシャフトがせり上がってくる構造となっている。せり上がる量は白いカムとマイクロスイッチで制御しているようだ。カムには途中に3個のノッチがあるので、速度によって4段階にせり上がるように思われる。
写真7 内部
写真8 錆びていたシャフト写真8の金属製のシャフトがかなり錆びていて、スムーズに動かないため、「だめだわ、ボロボロだわ」という音がしていたようだ。これなら磨いてグリスアップするだけで復活させられそうだ。
やすりとワイヤーブラシで丹念に錆を落とし、ギアの内部をパーツクリーナーで洗浄したうえで、たっぷりとグリスを塗りつけた。取り付ける前に、安定化電源につないで動作確認をしてみるとスムーズに動くようになった(嬉)。
〔組み付けと動作確認〕取り外しと逆に組み付け、ワイパーアームを取り付ける前に試運転をしてみたところ、ADVモーターの動作音は聞こえるが、「ゴゴゴー」とか「ガガガー」とかいう音はしなくなった。
せり出してくるADVのシャフトを見ていると、時速20kmくらいになるとモーターの動作音とともに数mmせり出してくる。車を停止させイグニッションをOFFにすると、やはりモーターの動作音とともにせり出していたシャフトが引っ込んでいく。もっと速度を出したときにどんな動作をするかは未確認だが、修理成功のようだ! ワイパーアームを取り付け、アジャストボルトをADVのシャフトに接するように調整して修理完了である。
さすがアウトバーンを200km/hオーバーで走る車、ワイパーも凝ったつくりがされている。日本の公道ではワイパープレッシャーコントロールの恩恵にあずかることは、まずないであろう。修理が高額になるのなら殺しておこうかとも思ったが、お金をかけずに修理することができて満足である。
〔その他〕E34は助手席側のワイパーアームがボンネットに干渉して削れているのをよく見かける。ディーラーでは、「アームのスプリングが強く、年数が経過するとヒンジ部分が手前に浮いてくるためにボンネットと干渉する。」と聞いたことがある。新品のアーム(ディーラー価格で6,400円、対策部品か?)に交換することで、その干渉はなくなり数mmのクリアランスができる。
運転席側のアームについては、私の車の場合、ワイパーを動作させるとAピラーにぶつかるだけでなく、アームの根元もボンネットと干渉して削れていた。取り付けをワンノッチ下げると干渉はしなくなるが、今度は中央でフロントガラスの下のプラスチック部分まで降りてしまう。これも新品アームに交換するとこで全く干渉しなくなった。新品アームと古いアームを比べると、裏側のスプリング周りに若干の違いがあり、これも対策部品かもしれない。同じ症状で悩んでいる方は交換してみると良いかもしれない。ただし、右ハンドルのADV用アームは本国発注で、しかも何と11,400円もした。
※ 今年の7月1日に部品の価格改定があったようだ。文中の部品価格はいずれも旧価格である。
DD号は525なので、幸い(?)なことにADVは付いていない。でも、以前のOBCのように、これを付けるのが流行したりして・・・(笑)。
末尾ではあるが、いつも珍しいDIYレポートをお送りいただいくミッチョさんに感謝する。
ご質問はddkunnejp【@】gmail.comまで。