2015年10月8日(木)

エンジン載せ替え「完成?」編 − ともパパさんより

今回のレポートは、エンジン載せ替えレポート の第4章だ。


ATの分解整備をして頂いているTKさんから作業完了の連絡が入りました。同時に以下のコメントも頂いています。

「JATCOはまだ2台目ですが、内部の状況は普通と言いますか良くも悪くも無い状態でした。バルブボディはメンテ済みですが、他の部分はそれなりにお年寄りなので大切に扱ってあげて下さいね。」

ATに対する愛情さえ感じるコメントです。部品取り車に載っている状態では不具合は感じずにむしろ程度良く思えた程でしたが、内部の状況はまずまずだったようです。でもここで分解整備して頂いたお陰で今後は安心して乗ることが出来ます。大変お手数お掛けしました。ありがとうございました。

AT内部の状況もオイルパンを外した際にペーパーダストや金属片も見られること無く、ブレーキバンドなどにも大きな消耗や損傷は見られないという事でしたので安心しました。整備中の内容も数多くの画像と共にご報告頂き、作業への慎重さと責任感、更には自信さえもが伺えます。作業完了後すぐに返送して頂いたので、こちらの工場には翌日に到着しています。

エンジンの方は完成しているとの事でしたので、あとは届いたATと組み合わせてともパパ号に載せる作業のみとなりました。待つ事数日、ついに帰って来ました! 昼間に工場から「大変お待たせ致しました。午後に納車に伺います。」とメールが来ていました。こんな日に限って仕事の後に遅くまで会議です。帰宅したら帰って来てました〜!!!

これはもう乗るしかないですよね! エンジン良し、AT良し、何から何まで全て良し! やっぱりイイですね! おっと、エンジンオイルに混ざり物・・・無し! これでやっと家族が全員揃った感じがします(嬉)。

 

でも、ここで一つ気になる点があります。

空吹かしでエンジン回転数をゆっくり上げて行った時、エンジンから不快な振動を感じます。以前のエンジンでは気にならなかったんですが、今度のエンジンでは1100rpmと2100rpm辺りでブルブルと振動があります。でも3100rpmでは振動しません。車体が揺れる程ではありませんが、シートやハンドルには振動が伝わって来ます。この2カ所の回転数以外では振動が消えます。イグニッションコイル、DME、エアマスセンサー辺りを交換しても変化ありませんし、プラグホールのオイル溜まりもありません。これは共振と思われますが、エンジンの回転バランスの問題なのでしょうか? フライホイールとトルコンの接続に合いマークは無さそうですし、今のエンジンが部品取り車に載っていた頃に振動があったかどうかも、今となっては不明です。走っていると分かりませんが、空吹かしでは顕著です。このままではシルキーではありませんねぇ。直列6気筒は一次振動、二次振動、偶力振動も発生しずらいはずなのにおかしいですねぇ。

エンジンから不快な振動を発生させる可能性があると思われる怪しい部分を潰して行く事にします。

まずはインジェクターです。職場にインジェクターを持参して、現物合わせで必要な物品を拝借して来ました。インジェクターには5ccのシリンジの内径がピッタリでした。圧を掛けるのでロック付きのシリンジと耐圧チューブを使わせて頂きます。こーゆー職員がいるからいつまで経っても経営が上向きにならないなんていう話もありますが、職場とE34を天秤に掛けたらE34の圧勝ですので仕方ありません(笑)。

5ccのシリンジのピストンを抜き、クリーナーキャブをシリンジ内に満たしてインジェクターを装着。耐圧チューブを繋いだら反対側のシリンジで空気を圧送します。手で押せない位に圧を高めたところで三方活栓で密閉、インジェクターの作動電圧であるDC5Vを掛けて噴射します。キレイな霧になるもんですね。これを6本繰り返してインジェクターの掃除は完了です。圧を掛けたままで漏れの有無も見ましたが漏れは無さそうです。因みにM50のインジェクターには4つの噴霧口が開いていました。この日は何故か私のロッカーだけガソリン臭かったのは気のせいです。

次に怪しい部分となるとエンジンハーネスでしょうか。今のエンジンとエンジンハーネスは元々セットだった物ですが、入れ替えてみる為にしました。まず、ともパパ号からエンジンハーネスを取り外します。下手すれば不動車ですのでちょっと勇気が要りますねー。でもこれでエンジンのブルブルが直る可能性があるのなら外しちゃいましょう!

コネクターの形状や配線の走行を確認しながら位置を覚えます。部品取り車のハーネスと違いは無さそうですが、唯一違う点はEボックス内の4Pリレーが茶色から若草色に変更されていました。

エンジンハーネスとハーネスホルダーの鉄板を外すと黒いエンジンブロックが丸見えになりますので磨く絶好のチャンスです。CRC5-56を吹き付けながらブラシで磨くと油汚れがどんどん落ちます。パーツクリーナーで汚れを流してからシリコンスプレーを吹きかけながら磨くとエンジンブロックがまるで新品のように輝きました。

部品取り車からも同様にエンジンハーネスを取り外します。至る所に柔らかいシリコンゴムが使われていてブーツの硬化や破れは殆ど見られませんが、流石に20年間の劣化は無視出来ませんでした。配線の断線や潰れ具合いを可能な限り確認したところコード自体は大丈夫なものの、その上に被さる被覆が割れたりブーツに穴が空いたりしている部分がありましたので補修します。

破れた被覆を取ってから熱収縮チューブで仕上げ、コネクターのブーツも2箇所破れを発見したのでドナーのハーネスからブーツを頂きます。コネクターの端子を抜くために不要なワイパーの骨を加工してSSTを製作しました。端子のロックはツメが2本あるので抜くのが厄介でした。不良箇所を補修してから全体をブラシで掃除。シリコンスプレーを吹きかけながら磨くと、エンジンハーネスも新品のように輝き始めました。

エンジンハーネスの補修とインジェクターの掃除が完了したのでドッキングして取り付け準備に掛かります。燃料のデリバリーパイプ内もクリーナーキャブをたらふく吹き込んでシェイクすると薄茶色の汚れが出たので掃除の価値がありそうです。

ハーネスをホルダーの鉄板にタイラップで固定していきますが、途中下車するコネクターと終点まで行くコネクターがありますので気を付けながら纏めます。キチキチに纏めてエンジンに取り付けた後に間違いに気付いたらさぞかしショックでしょうから、ある程度は融通が利くようにしておかないといけませんね。ハーネスの束は主に4方向に分かれます。インマニ下に収まる束は、セルモーター、ノックセンサー×2、吸気温センサー、スロットルポジションセンサー、水温センサー×2、アイドルバルブ、O2センサー、クランク角センサー、カム角センサー、VANOSソレノイド、油圧センサー、オルタネーター、油量センサーに繋がるコネクターです。それと並行してイグニッションコイル、アース、インジェクターに繋がるハーネスがインマニ上に行きます。車体右側に行く束はバルクヘッドにアースが繋がる他はEボックス内に入り、DME、プラス線、12Pコネクターに繋がるハーネスとリレーが3個です。左側にはインスペクションコネクターと隣の丸い集中コネクター、エアマスセンサー、ブリーザーバルブに繋がるコネクターの束が配置されます。

かなりのボリュームがありますが、1つ1つ接点復活剤を塗ってパッキンの有無を確認しながら接続します。幸い中古のハーネスなのでコードに癖が付いていて間違える事は無さそうですが、記憶を頼りにエンジンハーネスを組み付けていきます。この作業でエンジンハーネスは本来この車体に着いていた物に戻した事になります。全てのコネクターを正規の場所に繋いだつもりですが、エンジンを掛けるまで正解かどうかは不明です。

目視のチェックでは問題は無さそうですので外してあったバッテリーの端子を繋ぎます。「パチ!」っと言って室内灯が点いた所でちょっとビックリしました。だいぶビビってますね(笑)

緊張の瞬間、キーを回します。デリバリーパイプ内にガソリンが無いので少々長めのクランキングでしたが無事にエンジンは掛かりました。水温計が微妙に動き出すまで暖機をしてから問題の回転数まで徐々に上げてみます。

・・・ブルブル直っておらず!(悲)

じゃあ何ですか、点火系って訳ですか。それならプラグを交換して見ましょう。

外したプラグは電極の劣化や異常燃焼の跡も見られずに綺麗です。今回はNGKの「イリジウムMAX : BKR6EIX-P」にしました。

プラグ交換の度に「あぁ、単気筒だったらなぁ〜」なんて思ってしまうのは貧乏性の証でしょうか、でも6気筒で文句を言ってはいけませんね。新しいプラグのネジ部にカジリ防止のグリスを塗って組み付けます。エンジンを掛けて暖機しながら各イグニッションコイルが異常発熱していない事を確認します。緊張の瞬間、問題の回転数まで徐々に上げてみます。

・・・ブルブル直っておらず!(悲)

つー事は回っている物って訳ですか。それならクランクプーリー(バイブレーションダンパー)ですか?

それについて少し調べてみました。直6の長いクランクシャフトから発生する捻れと曲げの歪みを補正するためにフライホイールと同様にエンジン前後で回転バランスを取っている部品だそうで、それらの重量も緻密に計算されているようです。単に点火タイミングの決定とファンベルトを回しているだけではないんですねー。知りませんでした。

プーリーと円盤の隙間に入っているゴムが劣化して最悪の場合は千切れてバラバラになる事もあるそうですが、長く始動していなかったエンジンの場合にはファンベルトのテンションによる癖がついて隙間のゴムが歪むなんて事は・・・無いですよね。でもそれに期待しています。エンジンを掛けてみて、クネクネしながら回ってなんかいた日にはそいつが犯人です!という事で見てみましたが、見た限りでは綺麗に回ってました。

それでも念のためクランクプーリーも交換してみます! 試しに外してみましたが、意外と簡単に外れました。

冷却ファンとファンシュラウド、ファンベルト2本とクランクシャフトに固定されている13mmのボルトを6本外すだけです。年式による形の違いもあるようで、壊れたエンジンと今のエンジンでは違う物が着いていました。壊れたエンジンは1500rpm付近で失火のような振動はあるものの、それ以上の回転域では振動は皆無です。これは期待できそうな気がしませんか?両者を並べてみると形が全然違います。「C」や「E」の印字があったり、最終型のクランクプーリーは湾曲していて重量も軽く作られています。計量はしていませんが明らかに軽いです。この湾曲が悪さをしてか、こちらはウォーターポンププーリーも外さないと脱着出来ませんでした。

オフセットや直径の違いは無さそうなので入れ替え出来そうです。前側に着くエアコン系統のベルトが掛かるプーリーは共通でした。早速交換してエンジンを掛けてみます。

  ・・・ブルブル直っておらず!(悲)

他に回っている物とすれば、トルクコンバーターですよね。

トルクコンバーターはそう簡単に入れ替え出来ないのでフライホイールとの位相をズラしてみる事にしました。3本のボルトで固定されているので、外して120度ズラしてみます。

その結果、振動は無くならないものの振動が発生する回転数が下がって1800rpm辺りから振動するようになってしまいました。試しにもう120度ズラしても変化無く、更に更に元の位置まで戻しても変化無しです。あら?最初に位相をズラした時に振動の発生回転数が2100rpmから1800rpmに変化したんですが、元の位置に戻しても1800rpmのままになってしまいました。しかもそこから2300rpm位まで振動が続きます(?)。

エンジンを掛けながら下に潜っトルコンの様子を見てみましたが、何かバランス良く回っていそうです。エンジン下からインマニの方へ手を突っ込めば、下からでもスロットルボディが操作出来るんですね! 初めて知りました。吹かしてみると、振動はやっぱりエンジン本体からのようです・・・。

んー、何かおかしいですよね。マウント類も怪しいんですか?

まずはミッションマウントが悪いのかと思って後ろ側のマウントの隙間にゴム板を詰め込んで強化マウント風にしたところ振動は更に悪化、しかも高回転までミッションの唸り音が車内に入って来る始末です。詰め込んだゴムを取ると振動と騒音は一気に減りました。あの斜めのマウントってよく考えられてるんですね〜。部品取り車からもマウントを外してみましたが両方とも同等でしたので、藁をも掴む思いでそちらのマウントに交換してみましたが依然として振動は変わらずです。

もうここまで来たらエンジンマウントを新品交換しましょう!

見た目の劣化は分かりませんが、重量が掛かる右側が明らかに潰れています。左右ともMEYLE製の新品に交換する事にしました。エンジン載せ換え時の画像を見ると、エンジンマウントは車体に残したままでエンジンを脱着しているようなので現状のマウントは元々この車体に着いていた物のようです。

まずはエンジンの冷却ファンとシュラウドを外してから車をジャッキアップしてウマを設置します。車体下から留めてあるナットは簡単に緩みましたが、上から留めてあるナットがえらいトルクで締め付けられていてなかなか緩みません。しかも工具も入り辛い場所なので大変でした。どうやってあんな力で締め付けたんでしょうね? やっとの思いでナットを緩めてからエンジンのオイルパンをジャッキで持ち上げます。マウント自体の入れ替えは特に苦戦は強いられずに終了しました。

エンジンマウント交換後も特にエンジンが高くなったような目に見える変化はありません。緊張の瞬間、問題の回転数まで徐々に上げてみます。

・・・はい、ブルブル直っておら・・・!  お〜?振動が消えてます。

2100rpmの振動が消えています!残念ながら1800rpmの振動は伝わって来ますが、明らかに小さくなっています!

エンジンマウントの交換は今まででいちばん効果アリでした。車体に振動は伝わり難くなりましたがエンジン自体は振動を発していますので根本解決にはなっていないのが悲しい所です。ボディに振動を伝え難くするにはやっぱりマウント類の性能が物を言うようですね。こうなって来るとミッションマウントも新品交換してみたくなりますよね。3箇所あるミッションマウントのうち、前側の2つはネット上で数多く見かけるものの、後ろ側は全く流通していません。恐る恐るディーラーに聞いてみると何と17,000円! 後ろ側のマウントは部品取り車の物と入れ替えてみても変化無かったので今回は見送る事にします。

前側のマウントはブラケットも含めて全て13mmのボルトで留まっています。現状のマウントにはエンジンマウント同様、目に見えるような劣化はありませんでした。新品に交換して振動を確認します。

エンジンマウント程の効果はありませんでしたが、振動は更に減少しました。1100rpmと2100rpmの振動は消えましたが1500〜1800rpmの振動は僅かに残ります。2100〜2300rpmでは振動は感じないもののエンジンからの唸り音があります。やっぱりエンジン自体はその回転域で振動を発生しているようですね。そして、振動が発生する回転数をずっと維持できない事が新たに判明しました。アクセル開度を一定に保っていても振動が発生する回転数になると回転が下がってしまうかそれ以上に上がってしまうかのどちらかになります。エンジン自体もその回転域を避けているように思えてきました。この辺の回転数で関与して来るといえばVANOSでしょうか? それとも実は制御系統なんていうオチでしょうか?

謎の振動が治まらないエンジンで困ったものです。


なかなか振動は治まらないようだ。この振動の原因はなんだろう? 解決するのか!?

末尾ではあるが、面白いレポートをいただいた ともパパさんに感謝する。



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