2001年3月20日(祝)
キーレス取り付け − その1
私の車には純正の赤外線式キーレスエントリーがついている。しかし、これはルームミラーあたりにある赤外線受光機に向けてボタンを押さないと作動しないので、非常に使いづらい。そこで、電波式のキーレスエントリーをつけることにした。
購入したキーレスエントリーシステムは、To-Fitのものである。受信機を写真1に、送信機を写真2に示す。
写真1 キーレス受信機
写真2 キーレス送信機(リモコン)なお、今回はキーレスの取り付け方法について、
- 取り付け基本編
- 取り付け応用編
- 取り付け番外編
の3つに分けて説明する。なお、以下の取り付け方法は、BMW@FUNのE34オーナーズルームでご活躍の岩野様からご教授いただいたものである。ここに深く感謝の意を表すとともに、これらの情報が岩野様からいただいたことを明記する。
また、最初に断っておくが、以下の取り付け方法に従ってキーレスを取り付けて失敗したとしても、私は何ら責任を負わない(というか、負えない)。そのため、自己責任で取り付け作業を行ってほしい。ただし、うまく取り付けできない時には、メールをいただければ相談ぐらいにはのるつもりではある(答えられる範囲内だが)。
1. 取り付け基本編
取り付け基本編では、キーレスの基本的な動作(ドアのロックとロック解除)を実現するための基本的な取り付け方法を解説する。以下での説明は95年式 E34 右ハンドル D車 純正赤外線式リモコンキー付きのものである。年式やハンドルの位置が違うと、説明と異なるところがあるかもしれない。
(1) キーレスエントリーの受信機はリアシート下に取り付けて配線する。まずは、リアシートの座席部分を取り外す。写真3の赤丸で示した場所を上に無理やり上げるとクリップがはずれてリアシートの座席部分が取り外せる。
写真3 リアシート座席部分の取り外し
(2) 次に、キーレス受信機の線を取り付けるための車側の線を探す。私の車(右ハンドル)では、リアシート下の右側にバッテリーが、左側に黒いモジュールボックスがある。そのモジュールボックスに接続されている線の束の中から、ロック線(白い電線に赤い線と黄色の点々マーク)とアンロック線(青い電線に赤い線と黄色の点々マーク)を探す。線がたくさんあるので根気よく探してほしい。写真4にキーレス受信機を接続する部分を示す。
写真4 キーレス受信機を接続する部分(写真ではもう接続してあるが・・・)
(3) 車両側の配線にキーレスの配線を接続する。
表1 車両側の線とキーレス側の線の接続表
車両側の線
キーレス側の線 説 明
白い電線に赤い線と黄色の点々マーク
(ジェネラルモジュール側)緑/白
ロック線。12Vを入れるとドアがロックする。 白い電線に赤い線と黄色の点々マーク
(純正キーレスモジュール側)青/白
ロック線。純正キーレスでロックすると12Vが出力される。 青い電線に赤い線と黄色の点々マーク
(ジェネラルモジュール側)緑
アンロック線。12Vを入れるとドアのロックが解除される。 青い電線に赤い線と黄色の点々マーク
(純正キーレスモジュール側)青
アンロック線。純正キーレスでアンロックすると12Vが出力される。 少し太い目の赤い電線に黒線 赤、紫/白、紫
常時12V通電線 リアシート真中あたりにある茶色線 黒
アース線
上記の表は95年式のものであるが、岩野様の情報によると、
前期型 ロック線:白/赤/黄 アンロック線:青/茶/黄
中期型 ロック線:黄/白/赤 アンロック線:青/赤/黄
だそうである。車両側のロック線を切って、その両側にギボシ端子のオス・メスを圧着する。同様に、アンロック線も切って、その両側にギボシ端子を取り付ける。ジェネラルモジュールに接続されている方にはメス、純正キーレスモジュールに接続されている方にはオスを取り付ける。ジェネラルモジュールに接続されている方の線は、下側へのびている線である。
次に、キーレス側の配線にギボシ端子を取り付ける。緑/白にはギボシ端子オス、青/白にはギボシ端子メス、緑にはギボシ端子オス、青にはギボシ端子メスを取り付ける。なお、常時12Vに接続する紫/白と紫の線は、事前に赤線のヒューズより受信機側に接続しておく。
そして、表1の通りに接続する。常時12V通電線は、写真5に示すように青色の割り込み用接続コネクタによって接続する。
写真5 配線の接続
写真6 アース線の接続(4) キーレス送信機を操作してみてテストする。配線がうまくできていれば、キーレス送信機の操作により、ドアがロック/アンロックされるはずである。
(5) 受信機をモジュールボックスの横にいれて、シート座席部分をもとに戻せば、できあがり!
2. 取り付け応用編
ここでは、応用編について説明する。ここでのポイントは、
- ジェネラルモジュールへのロック線とアンロック線を同時に12Vにするとダブルロックがかかる。
- ロック線とアンロック線を同時に12Vにして、それを持続させると開いているウィンドウが順に閉まる。
- 上記の2つを実現するために、キーレス受信機を改造する。
の3つである。
車両側とキーレスとの配線は、取り付け基本編のままである。以下に、キーレス受信機の改造方法を説明する。なお、以下の改造を行うためには、少しばかり電子回路の知識があり、少しばかりハンダ付けがうまくないといけない。初めて電子工作をする人にはお勧めできない。
(1) キーレス受信機から基板を取り出す。
キーレス受信機のふたは写真7に示すように4つのネジでとまっている。その4つのネジをはずして、写真8のような基板を取り出す。
写真7 キーレス受信機裏側
写真8 キーレス受信機基板
(2) 取り付ける部品を用意する。用意するものは表2の通りである。
表2 用意する電子部品
部品名
説 明
PIC12C509 8ピンのワンチップマイコン。プログラムを焼きこむ必要あり。 抵抗240Ω 1/4Wの抵抗 ツェナーダイオード5.6V 抵抗とともにPICの電源電圧を作成する。 まずは、PIC12C509にプログラムを焼きこむ。PIC12C509は、写真9のようなチップである(ピンぼけご容赦)。プログラムのソースコードはこれである。このソースコードをアセンブルして、オブジェクトファイルを作成し、PIC12C509に焼きこめばよい。PICのアセンブラは、マイクロチップ社のホームページから入手できる。また、焼きこみには焼きこみ用のハードウェアが必要であるが、秋月電子等から安く販売されているし、自分でも作ることができる(私は自分で作った)。
写真9 PIC12C509
(3) 電子部品を基板に取り付ける。
はじめに、PIC12C509を基板上のCMOS IC(40106)の上に両面テープで貼り付ける。このとき、PIC12C509の足は水平方向にまっすぐにして、先の部分を切断しておく。貼り付けたところを写真10に示す。
写真10 PIC12C509を貼り付けたところ次に、写真11に示すAとBのダイオードの線を基板から抜く。そして、表3に示すように配線する。
写真11 基板上での配線する位置表3 基板上への配線
PIC12C509のピン番号
基板上への配線
2
Bのダイオードの足 3
Aのダイオードの足 6
Aの基板側 7
Bの基板側 8
C(グラウンド) さらに、ツェナーダイオードを1ピンと8ピンの間(8ピンから1ピン方向に電流が流れるように)へ、抵抗を1ピンとDとの間に接続する。このようにして、接続したものを写真12に示す。
写真12 基板上へ配線した様子
(4) 基板裏側の配線をする。
基板裏側には、写真13に示した2箇所をショートさせる。ショートさせるには余った抵抗の足なんかをはんだ付けすればよい。
写真13 基板裏側でショートさせる部分これで改造はできあがりである。キーレス受信機を車に取り付けて動作を確認していただきたい。
ところで、改造したキーレスの追加機能であるが、主に以下のものである。
- 送信機のロックボタンでダブルロックがかかる。
- 送信機のアンロックボタンを押して点滅が消えてから3秒以内にロックボタンを押すと、ウィンドウが自動的に閉まる。
- ウィンドウが自動的に閉まっている間でもアンロックボタンを押すとウィンドウの止まり、さらにロックが解除される。
これらの操作方法やそのときの動作は、前述の岩野様のアイデアである。岩野様はワンショットのTTL ICを使って実現しておられるが、私は敢えてワンチップマイコンで挑戦してみた。実際のところ、あまり意味のない挑戦であったが・・・・・・。
3. 取り付け番外編
私がTo-Fitから購入したキーレスシステムは、送信機に鍵を内臓できるタイプのものである。すなわち、送信機のボタンを押すと飛び出しナイフのように鍵が飛び出てきてカッコイイものである。メルセデスの純正キーにもあるようなヤツだ。写真14にその送信機(鍵付き)を示す。なお、鍵自身はTo-Fitからキーレス送信機用のブランクキーを購入し、近所の鍵屋さんで加工(コピー)してもらった。BMWの鍵は半立体形状なので加工費用がとっても高い(泣)。
写真14 送信機の鍵部分を格納したところと飛び出させたところキーレス送信機でドアロックを解除した後は、この鍵でエンジンをかければいいわけである。ただし、そうはうまくいかない。というのは、私の車は95年式であるためイモビライザー付きである。イモビライザーというのは、電子式のID照合システムで、鍵に内蔵されている電子式IDと車両側のIDが一致しなければ、セルモーターが回らずエンジンがかからないようになっている。いわゆる一種のセキュリティシステムである。このままでは鍵の意味がない。そこで、BMW購入時に付いていたスペアキーからイモビライザーチップを取り出してキーレスの送信機に移植してみることにした。
スペアキーは、金属のものとプラスチックのものの2種類がある。まずは、金属のスペアキーから分解してみた。
写真15 金属製スペアキーを分解したところすると、中には写真15のようなイモビライザーチップが入っていた。これをとりだしたものが写真16である。
写真16 イモビライザーチップ一緒に写っているタバコと比較してもわかるように、非常に小さいものである。これを写真17のようにキーレスの送信機の中に両面テープで貼り付けた。
写真17 イモビライザーチップをキーレス送信機の中に貼り付けたところ同様にして、プラスチックのスペアキーも分解してみた。
写真18 プラスチック製スペアキーを分解したところキーレスの送信機は2つあるので、これのイモビライザーチップももうひとつのキーレス送信機に取り付けた。
これで、ちゃんとエンジンがかかるようになった。楽勝である。
今回は、「キーレス取り付け − その1」として、「基本編」、「応用編」、「番外編」を解説した。しかし、私の中ではまだ完成とはいえない。近いうちに、PICチップのプログラムを改良するつもりである。その経過と結果は、「キーレス取り付け − その2」として報告する。
今回のキーレス取り付け費用内訳
購 入 物 品
単価
個数
小計
To-Fitキーレスシステム 9,800
1
9,800
スペア送信機 2,800
1
2,800
BMW用ブランクキー 980
2
1,960
ブランクキー加工費用 4,000
2
8,000
ギボシ端子(50個入り) 600
1
600
割り込み接続コネクタ(10個入り) 520
1
520
PIC12C509 180
1
180
抵抗、ダイオード等 100
100
合計(税抜き) 23,960
ご質問はddkunnejp【@】gmail.comまで。